Dynamic Multipoint VPN(DMVPN)とは?DMVPNのプロトコルとフェーズ

ネットワーク規模が拡大するにつれて、すべての通信を1つの中央VPNハブに集約し続けることへのストレスも増大します。レイテンシ(通信遅延)が少しずつ増加し、トラフィックが集中し、全体のパフォーマンスも落ちてきます。もしこうした問題に遭遇したことがあるなら、Dynamic Multipoint VPN(DMVPN)が最適な解決策になるかもしれません。DMVPNを使えば、各拠点が必要に応じて安全なダイレクトトンネルを確立できるため、常にメインハブに頼る必要がなくなります。

この記事では、DMVPNとは何か、その仕組み、そして標準的なサイト間VPNよりも、DMVPN の方が賢明な選択となるケースについて、わかりやすくご説明します。

Dynamic Multipoint VPNの仕組みとは?

Dynamic Multipoint VPNの仕組みを示す図

DMVPNとは、複数のリモート拠点が仮想WAN(広域ネットワーク)を構築し、インターネット接続を介して相互に通信できるようにするネットワーク構成の一種です。これはハブアンドスポーク型ネットワークの一例で、各リモート拠点(スポーク)にはそれぞれ、中央のDMVPNサーバー(ハブ)に接続するように設定された独自のルーターがあります。

DMVPNの中央ハブは、各拠点のルーターに関する情報を保持しています。ある拠点が別の拠点と通信する場合(例えばファイルの転送やVoIP通話の開始など)、まずハブに接続します。そして、接続先拠点の動的IPアドレスなど、必要な情報をハブに問い合わせます。送信側のスポークは、この情報を使用して、接続先スポークに直接接続する独自の安全なVPNトンネルを作成するのです。

Dynamic Multipoint VPNを構成する要素(コンポーネント)

マルチポイントGRE

マルチポイントGRE(mGRE)とは、Generic Routing Encapsulation(GRE)トンネリングプロトコルを使用するトンネルインターフェースです。mGREは、DMVPNのハブとスポークが相互に安全なトンネルを構築できるようにする仕組みです。ただし通常のGREと違い、mGREは接続ごとに個別のGREトンネルインターフェースを作成する必要がなく、ネットワーク全体に対して1つのインターフェースを作成します。これにより、ルータが多数の異なるインターフェースを管理する必要がなくなり、ネットワークの管理がよりシンプルになります。また、新しい拠点を追加する際にも、毎回新しいインターフェースを設定して構成する必要がありません。

NHRP

DMVPNスポークが別の拠点とデータをやり取りするためには、相手スポークのパブリックIPアドレスが必要です。Next Hop Resolution Protocol(NHRP)は、DMVPNがネットワークアドレス情報を追跡および通信するために使用する仕組みです。DMVPNのハブは、すべてのルーターのパブリックIPとトンネルIP(ネットワーク上の各ルーターに割り当てられたプライベートアドレス)のデータベースを保持しています。あるスポークが別のスポークに接続する場合には、NHRPを使用して、相手スポークのトンネルIPに対応するパブリックIPアドレスをデータベースに問い合わせます。

ルーティングプロトコル

ルーティングプロトコルは、DMVPNが異なるスポーク間のトラフィックに対し、効率的なルートを見つけるのに役立ちます。DMVPNは通常、ネットワークの規模に応じて複数のプロトコルをサポートします。たとえば、OSPFは設定が簡単で、ルート数が多すぎない状況ではルートの更新が速いため、小規模ネットワークに向いています。一方、EIGRPBGPは、多数のルートを処理できるうえに、管理者がトラフィックをより細かく制御できるため、大規模ネットワークに適しています。

IPsec

IPsecはセキュリティプロトコルのひとつで、ハブとスポーク間、そしてスポーク同士の間でやり取りされるデータを暗号化します。これにより、スポーク間でやり取りされる機密情報は、インターネット接続を経由する際にも安全に保護されます。たとえ接続が傍受されたとしても、傍受者が閲覧できるのは、判読が不可能な暗号化されたデータのみです。

Dynamic Multipoint VPNのフェーズ

Dynamic Multipoint VPNのフェーズを示す図

DMVPN は、その構成要素を段階的に実装することで機能します。

フェーズ1

まず、すべてのスポークがIPsecを使用してハブに安全に接続されます。その後、ハブはNHRPを用いてスポークのIPアドレスのレジストリを作成します。このフェーズでは、スポーク同士の直接通信は行われないため、ルーティング構成はシンプルです。すべてのトラフィックが、まずはハブを通過する必要があります。

フェーズ2

次に、各スポーク上のVPNルータはmGREを使用し、スポーク同士がハブを介さずに直接通信できるようにします。あるスポークが別のスポークへの接続を要求した場合、ルータはハブにNHRPリクエストを送信します。これにより、ハブは接続先のスポークのIPアドレスを取得して、スポーク間トンネルを作成できます。

フェーズ3

ハブが初期接続を確立したあとは、スポークの効率が向上し、ハブへの依存度が低くなります。さらに、最適化されたルーティングプロトコルによって、スポーク同士はハブを介さずに直接ルーティング情報を共有できるようになるのです。また、スポークはNHRPを使用してネットワーク構成を把握し、記録し続けるため、新しいスポークをDMVPNに簡単に組み込むことができます。

Dynamic Multipoint VPNのメリット

    • 管理の簡素化:ネットワークの保守が非常にシンプルです。複雑な構成ではありますが、DMVPNのコンポーネントは一度設定するだけでよく、その後はネットワーク自体が新しいトンネルの開閉を動的に処理します。
    • 拡張性:新しいリモート拠点をスポークとしてネットワークに追加するのが簡単です。新しいスポークにVPNルーターを設定すれば、ネットワークに統合され、他の任意のスポークとの接続を即座に確立できるようになります。
    • 帯域幅の使用量低減:スポーク間で直接通信することで、ハブの帯域幅を節約できます。また、ハブがボトルネックになることを防ぐことで、ネットワークのレイテンシも低減します。

Dynamic Multipoint VPNのデメリット

    • セットアップが複雑:DMVPNの構築は、シンプルなIPsec VPNよりもはるかに複雑です。DMVPN では多数のコンポーネントが動的に連携して動作するため、わずかな設定ミスでも、後々大きな問題を引き起こす可能性があります。

    • 大規模ネットワークに適している:ネットワークに含まれるリモート拠点の数が非常に少ない場合、シンプルな集中型VPNを使用する方が簡単で、コストも抑えられます。
    • 複雑なトラブルシューティング:システムの動的に動作するため、トラブルシューティングが困難になることがあります。トンネルがオンデマンドで開閉されるため、「従来の」静的VPNや常時接続VPNよりも問題箇所の特定が難しくなる場合があるのです。

Dynamic Multipoint VPNと他の企業向けVPNとの違い

  DMVPN 従来型サイト間VPN  リモートアクセスVPN
機能 要求に応じて、複数の拠点間に直接トンネルを作成し、動的に接続する 静的なVPNトンネルで複数拠点を接続する 単一ユーザーの端末をインターネット経由で企業ネットワークに接続する
セットアップのしやすさ 高度な設定を伴う複雑な初期セットアップ 中程度。各拠点で手動設定が必要 小規模ネットワーク向けでは簡単。中央VPNサーバーを設定し、ユーザー端末にクライアントソフトを導入するのが一般的
管理のしやすさ セットアップ後の管理は最小限 少数拠点なら管理可能。規模が大きくなると難しくなる ネットワークが拡大するにつれて複雑になる
拡張性 良好:新しい拠点の追加が非常に簡単 低い:拠点数が多いと導入や管理が困難になる 中程度:多数のユーザーを追加するには、特別なアップデートが必要
トラフィック経路 スポーク間で直接通信 すべてのトラフィックが中央VPNサーバーを経由する クライアント端末と企業ネットワークのゲートウェイ間で通信
トポロジー 動的(スポーク間通信) 静的(ハブ&スポーク) 静的(ユーザーとネットワーク)
パフォーマンス 直接トンネルによりボトルネックを回避 中央サーバーがボトルネックとなる可能性がある ユーザーのインターネット接続に左右される
最適な用途 スポーク間の通信が断続的である大規模ネットワーク 少数拠点で常に直接接続が必要な場合 共有アプリやリソースへのリモートアクセス提供

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DMVPN はあなたのネットワークに適した選択肢なのか?

Dynamic Multipoint VPN(DMVPN)は、トラフィックを常に中央ハブ経由でルーティングするのではなく、リモート拠点同士を直接接続することを可能にします。この直接接続により通信速度が向上し、メインハブの負荷が軽減されます。また、ネットワークへの新しい拠点の追加が非常に簡単なため、拡張性にも優れています。

しかし、DMVPNモデルでは複雑な初期設定が必要です。そして、その複雑さゆえに、トラブルシューティングも困難になることもあります。小規模ネットワークの場合は、セットアップがより簡単な従来型サイト間VPNのほうが適していることが一般的です。DMVPNは、ネットワーク内に多数のリモート拠点を持つ企業に適しています。

よくある質問

Dynamic Multipoint VPN(DMVPN)とは?

DMVPNとは、ネットワークアーキテクチャの一種で、複数のリモート拠点が安全に接続できるようにするものです。すべてのトラフィックを中央ハブに通す代わりに、必要に応じて拠点同士の直接トンネルを動的に作成します。非常に拡張性が高いため、多数のリモート拠点を持つ大規模ネットワークで効率的に利用できます。

マルチポイントVPNは従来型VPNとどう違いますか?

主な違いは、リモート拠点の処理方法です。従来型VPNでは、すべてのトラフィックが中央サーバーを経由する静的モデルを採用しています。マルチポイントVPNでは、リモート拠点が相互に直接トンネルを確立できます。これにより、中央サーバーがボトルネックになる可能性がなくなり、帯域幅の節約につながります。

企業ネットワークでDynamic Multipoint VPNを使用するメリットは何ですか?

DMVPNの主なメリットの一つは、ネットワークに新しいリモート拠点を追加する際に、必要な設定がほとんどないという拡張性です。また、スポーク同士がハブを介さずに直接通信するため、レイテンシも短縮されます。これにより、大規模企業におけるネットワーク管理がはるかに簡単になります。

リモート通信においてDynamic Multipoint VPNは安全ですか?

はい、DMVPNモデルは非常に安全です。スポークとハブ間、そしてスポーク同士の間で送信されるすべてのデータは、IPsecプロトコルを使用して暗号化されます。つまり、機密データを安全に交換できるのです。

クラウド接続にDMVPNを使用できますか?

はい、クラウドベースの仮想ルーターを中央ハブとして使用できます。すべてのリモート拠点は、クラウドハブへの安全な暗号化トンネルを確立できます。これにより、各拠点はクラウドアプリケーションやデータにアクセスできるほか、相互に直接通信することも可能になります

マルチポイントVPNでは、一般的にどのプロトコルが使用されますか?

DMVPNは主に3つのプロトコルを組み合わせて使用​​します。NHRP(Next Hop Resolution Protocol)はスポークのネットワークアドレス情報を管理します。mGRE(マルチポイントGRE)は複数のエンドポイントに対して単一のトンネルインターフェースを作成します。最後に、IPsecは強力なトラフィック暗号化とセキュリティを提供します。

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