VPCとVPN:違いと関係性は?

VPCとVPNは名前が似ていますが、それぞれの目的は異なります。VPC(Virtual Private Cloud の略)はプライベートで安全な仮想ネットワーク空間で、VPN(Virtual Private Network)はプライベートネットワークに安全に接続するための仮想トンネルのようなものです。両者は併用できますが、互換性はありません。

本記事では、VPCとVPNの仕組みや使い方について詳しく解説します。仮想プライベートクラウド(VPC)と仮想プライベートネットワーク(VPN)の定義、機能、相互補完関係について学びましょう。

仮想プライベートクラウド(VPC)とは?

仮想プライベートクラウド(VPC)は、パブリッククラウド内の専用のネットワーク空間で、リソースを共有したい企業や個人が作成します。VPCを利用すれば、サーバーなどの物理的なストレージを維持することなく、プライベートネットワークのホスティング、アプリの実行、データのオンライン保存が可能です。また、VPCでアクセス権限を制御することで、許可されたユーザーのみがどこからでもこれらのリソースを利用できます。 

VPCを作成すると、クラウドプロバイダーが提供する共有インフラストラクチャ内に、独自のプライベート仮想空間を構築できます。このプライベート仮想空間は単なる巨大な空のクラウドではなく、トラフィックの流れ、ネットワークの異なる領域へのアクセス許可、セキュリティレベルを制御するコンポーネントで構成されています。

VPNの構造を示したインフォグラフィック
    • サブネット:VPC内のネットワークの区画(セクション)で、リソースの整理と保護を目的としています。サブネットはVPC(仮想プライベートクラウド)をIPアドレスの範囲で小さなゾーンに分割します。サブネットで公開向けアプリ用のセグメントと内部ツール用のセグメントを別々に設定できますので、誰がどのリソースにアクセスできるかを管理するのに役立ちます。
    • VLAN(仮想ローカルエリアネットワーク):ネットワークトラフィックを分離・保護する仕組みで、接続デバイスが衝突なくスムーズに通信できるようにします。通常、VLANはクラウドプロバイダーがバックエンドで処理しますので、VPC内ではVLANを管理する必要はありません。
    • セキュリティグループ:VPC上の個々のリソースへのアクセスを許可または拒否する制御機能です。これらの制御は特定のIPアドレスやポート(ウェブやメールなど、ネットワークへの流入・流出トラフィックの種類を制御)に対して設定可能です。これにより不要な接続を遮断し、システムを脅威や不正アクセスから保護します。
    • ルートテーブルVPC内でデータがどの方向へ向かうべきかを決定するルール一覧です。トラフィックの経路選択、サブネット間の移動可否、特定宛先へのブロックを制御します。
    • NAT(ネットワークアドレス変換):プライベートクラウドが安全にパブリックインターネットにアクセスできるようにするツールです。VPC上の特定リソースに共有パブリックアドレスを割り当て、更新プログラムのダウンロードなどを行う際にインターネットに露出することなく処理されるようにします。

企業がVPCを採用する主な理由は、ハードウェアコストを気にせず設定をカスタマイズし、必要に応じてスケールアップ/ダウンできる点にあります。代表的なVPCサービスにはAmazon Web Services(AWS)、Google Cloud、Microsoft Azureなどがあります。

仮想プライベートネットワーク(VPN)とは?

VPNの仕組みを示したインフォグラフィック

VPN(仮想プライベートネットワーク)は、デバイスとネットワーク間の安全な接続を確立するツールで、インターネットトラフィックを暗号化し、プライベートサーバー経由でルーティングします。 

ただし、VPNには個人向け、ビジネス向けなど複数の種類があります。いずれも暗号化されたプライベートな仮想トンネルを構築しますが、利用目的は異なります。VPCと混同されやすいビジネスVPNから説明しましょう。 

1. ビジネスVPN(VPCに最も類似)

ビジネスVPNは、従業員が企業のプライベートリソースに安全に接続することを可能にします。これには社内アプリ、データベース、ファイルサーバー、さらにはVPC自体も含まれます。ビジネスVPNとVPCの主な違いは、ビジネスVPNがプライベートネットワークへの接続手段であるのに対し、VPC自体がプライベートネットワークそのものである点です。

ビジネスVPNはリモートワーカーの安全なログインも実現します。企業がVPNゲートウェイを設定すると、リモート従業員は端末にVPNアプリをインストールし、そのゲートウェイへ接続できます。接続後は、自宅からでも会社のPCと同じように自社のシステムにアクセス可能です。 

2. パーソナルVPN

パーソナル(商用)VPNは、個人のオンラインプライバシー保護を目的とした日常的なインターネット利用者向けです。ビジネスVPNが企業のプライベートネットワークへの安全な接続を提供するのに対し、個人用VPNは個人の端末のインターネットへの安全な接続を確立します。個人用VPNは、ユーザーが選択した場所のサーバーを経由してトラフィックを暗号化・再ルーティングします。

暗号化により、接続を傍受する可能性のある第三者(公共Wi-Fi上のサイバー犯罪者など)がデータを解読できなくなります。また、ISPが訪問したドメインを把握することも防げます。また、実際のIPアドレスはVPNサーバーの所在地のIPアドレスで隠蔽されます。よって、WebサイトやネットサービスはVPNサーバーの所在地しか認識できないため、オンライン上のプライバシーをさらに強化できます。

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VPCとVPNの違いとは?

VPCビジネスVPNパーソナルVPN
定義パブリッククラウド内のプライベートネットワークプライベートネットワークへ安全に接続するツールインターネット接続を暗号化するサービス
主な目的アプリ、データ、社内ツールなどのリソースのホスティングとアクセスプライベートシステムへの安全なアクセスオンラインプライバシーの保護とデータセキュリティの確保
利用者企業、開発者、IT部署従業員のネットワークアクセスを管理する必要がある組織インターネットの安全を確保したい個人

VPNとVPC、どちらを選ぶべき?

VPNとVPCの利用用途を示したインフォグラフィック

パーソナルVPNの利用用途

    • アクティビティの暗号化: オンラインでのアクティビティを隠蔽し、データ盗難を防止します。特にセキュリティ対策が不十分な公共・共有ネットワークを利用する際に便利です。
  • 個人情報の保護: IPアドレスを隠蔽し、ウェブサイトや広告主によるウェブ上での追跡を最小限に抑えます。
  • ISPの通信速度制限の回避:ISPに訪問先ドメインを検知されるのを防ぎ、帯域幅制限を回避します。
  • ロケーションベースの価格設定の回避:オンラインショッピングや旅行予約時にロケーションベースの価格差異を防ぎます。
  • コンテンツへの安全なアクセス:学校や職場などの制限付きネットワークで、ネットワーク管理者からネット上のアクティビティを隠蔽しアクセス制限を回避します。
  • ビジネスVPNの利用用途

      • テレワーク従業員の安全な接続:個人端末や公共Wi-Fi利用時でも、リモートワーカーが企業システムへ安全に接続できるようにします。 
      • チームアクセスの制御:プライベートネットワークへのアクセス権限を管理します。
      • 企業データの保護:機密ファイル・記録・社内ツールが公共インターネットやハッカーに晒されるのを防止します。
      • セキュリティ規則の順守:GDPR、HIPAA、PCI-DSSなどの業界規制に準拠するため、社内ネットワークへのトラフィックを暗号化しアクセスを管理します。
      • オフィス拠点間の接続:暗号化されたサイト間VPN接続で、異なるオフィスのチームを連携させます。

    VPCの利用用途

      • クラウドでのアプリ・ワークロード実行:物理サーバーを運用せずに、プライベートクラウド空間でウェブサイト、ツール、サービスをホスティングします。 
      • リソースの保護: 重要なデータ、アプリ、通信をプライベートクラウド内に保持し、外部アクセスを防止します。
      • スケーリング: 企業の成長に合わせて、処理、ストレージ、サーバーを追加します。既存のクラウドインフラを活用することで、スケーリングを容易かつ低コストに実現します。
      • ネットワーク設定のカスタマイズ: トラフィックの流れ、アクセス権限、プライベートクラウド内の接続方法を決定します。

    VPCとVPNは併用できますか?

    VPCとVPNは異なる役割を担うため併用が可能です。VPCのセキュリティは、クラウドインフラ内部での保護に焦点を当てていますので、デバイスからインターネットに接続する経路を保護するわけではありません。接続が第三者に傍受された場合(例:オープンWi-Fiホットスポット上のハッカー等)、攻撃者が必ずしもVPCに直接アクセスできるわけではありません。しかし、接続中の閲覧内容や操作を見られる可能性があります。また、中間者攻撃(MITM攻撃)を仕掛けてVPCのログイン情報を盗むことも可能です。 

    しかし、VPNを使用すれば、デバイスからインターネットに接続する経路を保護できます。VPNはデバイスからのデータ通信を暗号化するため、万が一攻撃者がデータを傍受してもVPC内のアクティビティを見ることはできません。なお、VPCとVPNを併用したい場合、仮想プライベートクラウド内にVPNサーバーを稼働させることができます。これにより、いつでも安全な仮想トンネルを経由してVPC内部にアクセスできます。

    VPCとVPN、どちらを選ぶべき?両方使うべき?

    VPCとVPNは利用目的が異なるため、どちらか一方を選択する必要はありません。VPCは独自のクラウドネットワークの構築・管理を支援します。一方で、VPNはVPCネットワークへのアクセス時またはインターネット通信時のプライバシーと安全性を確保します。クラウドインフラを制御する場合はVPCを使い、仕事中や外出先でインターネットの安全を確保したい場合は、VPNが最適です。

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    よくある質問

    VPCとVPNの違いは何ですか?

    VPCとVPNの主な違いは、VPCがプライベートクラウド環境の構築を可能にするのに対し、VPNはオンラインネットワークへのプライベートで安全なアクセスを可能にする点です。企業はVPCを利用してクラウド上でアプリ、データ、サービスをホスティングします。VPNは通信接続を暗号化し、どこからでも安全に仮想ネットワークへアクセスできるようにします。

    VPNはVPC内で利用できますか?

    はい、VPCはVPNサーバーを始めとする仮想サーバーをホスティングできます。VPC内でVPNサーバーを稼働することで、クラウドへの通信接続が完全に暗号化されます。これにより通信データが盗聴されるのを防せげます。

    VPNよりもVPCの方が安全ですか?

    VPNとVPCはそもそも用途が異なりますので、「どちらがより安全」という比較はできません。VPCはパブリックインターネットから隔離されたプライベートクラウド環境を構築します。VPNはインターネット接続を暗号化します。よって、両者を併用することで自社のプライベートクラウド環境・アクセスの安全性を実現できます。

    VPCではなくVPNを使うのはどんな時?

    特に公共Wi-Fiでインターネットを利用する際にはVPNの使用が推奨されます。VPCは仮想クラウド環境を構築しますが、パーソナルVPNはインターネット通信を暗号化します。インターネット利用時のプライバシー保護、通信速度制限の回避、オープンホットスポットを安全に利用したい際に最適です。なお、リモートチームが社内システムに安全にアクセスするにはビジネスVPNがおすすめです。

    VPCは外部ネットワークに接続するのにVPNが必要ですか?

    必ずしも必要ではありませんが、VPNを使うことでセキュリティを強化できます。VPCはインターネットに直接接続が可能ですが、その場合VPCシステムの情報が漏洩するリスクがあります。VPNはシステムのプライベート性と安全性を確保しますので、特にクラウドが一般公開されることなく特定の外部システムからのアクセスのみを許可したい場合などに便利です。

    クラウドインフラにおいてVPCとVPNはどのような関係性がありますか?

    VPCとVPNを併用することで、プライベートなクラウド環境の構築とアクセスの安全性を確保できます。VPCはアプリケーションを実行しデータを保存するための安全なクラウド空間を提供します。一方で、VPNはユーザーがその空間に安全に接続するためのツールです。よって、両者を組み合わせることで従業員とクラウド間にプライベートで暗号化されたトンネルが構築されますので、リモートアクセス、内部セキュリティ、機密システムの外部脅威からの保護において重要な役割を担います。

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