SSL-VPNは、社内のシステムのプライベートネットワークに安全に通信アクセスする技術です。他のタイプのVPNとは異なり、特定のソフトウェアを端末にインストールする必要がありません。SSL-VPNは、通常のウェブブラウザからアクセスできる、データ専用の「プライベートトンネル」のようなものです。
企業はSSL-VPN経由でテレワーク勤務の従業員などに社内ファイル・システム・アプリケーションへのアクセス権限を付与しています。ログインが簡単で、ほとんどの端末に対応しているので幅広く普及しています。本ガイドではSSL-VPNの仕組み、従来のVPNとの違い、リモートアクセスでの活用方法について解説します。
SSLとは何か?VPNが採用されている理由は?
SSLは「Secure Sockets Layer(セキュア・ソケット・レイヤー)」の略称で、セキュリティプロトコルの一種です。「プロトコル」とは、パソコンなどの通信端末が安全に情報を共有するためのルールのようなものです。その他のセキュリティプロトコルと同様に、SSLは通信を暗号化しブラウザとサーバー間で安全な接続を確立し、パスワードや社内文書など入力・閲覧するあらゆる情報をデータの盗聴や改ざんから保護します。
SSLはウェブブラウザ上で動作するため非常に便利で、利用するのに特別なソフトウェアをインストールする必要はありません。よって、企業システムへの安全なリモートアクセスに最適です。テレワーク社員などは会社のポータルサイトにいつも通りログインするだけでメール、ファイル、アプリに安全にアクセスできます。
SSLは大半のファイアウォールを通過でき、公共Wi-Fi環境でも確実に動作します。脆弱なオープン接続を防止し、文書やメール、メッセージに安全なアクセスできますから、リモートワークや出帳先から作業する際も非常に便利です。
なお、SSLプロトコルは2015年に正式に廃止され、「TLS(Transport Layer Security)」に切り替わりました。TLSはSSLと機能は同じですが、より強力で新しい暗号化を採用しています。ほとんどのサイトはTLSに移行していますが、SSLという用語が今でも一般的に使用されています。
SSL-VPNとは?
SSL-VPNは、プライベートネットワークにウェブブラウザから安全にアクセスする技術で、端末とネットワーク間で送受信される通信データを暗号化します。仮想トンネルのようなものと考えると良いでしょう。会社の従業員はブラウザ経由でこの仮想トンネルを通過し、必要なファイル、アプリ、デジタルツールにアクセスします。
なお、SSL-VPNには、「ポータルベース」と「トンネルベース」の2種類があります。

SSLポータルVPN
ほとんどのSSL-VPNは、「ポータルサイト」と呼ばれる標準的なウェブポータル経由でアクセスできます。例えば、社内のポータルページに移動する場合、ログイン情報(二要素認証が必要なことも多い)でログインすると、自動的に暗号化されたトンネルを通じて内部システムにアクセスすることになります。SSL-VPNは、複雑なアプリやソフトウェアのインストールが不要で、簡単かつ迅速に設定できるのが特長です。
但し、SSLポータルVPNはポータルページ内での通信のみをVPNで保護しますので、ブラウザ上のその他のタブやウェブページは保護されません。つまり、メールアカウントやファイル共有アプリなど、その他のアプリにSSLポータルVPNは適用されません。
SSLトンネルVPN
トンネルベースのSSL-VPNはクライアントソフトが必要で、従来のVPNと同じタイプのVPNです。一般的に「クライアントソフト」とはアプリやブラウザ拡張機能などのソフトウェアであり、企業ネットワークへの接続を暗号化するツールです。SSLトンネルVPNは、リモートアクセスにおける利点からSSL/TLSプロトコルを採用しています。
SSLトンネルVPNの有利な点は、社内システム内の通信だけでなく、その他の通信も暗号化できることです。例えば、ブラウザ拡張機能を使えば、ブラウザ上のすべてのタブやウィンドウをVPNで保護できます。SSL-VPNのクライアントソフトは、端末のすべての送受信データを保護します。
SSLトンネルVPNの利用手順は以下の通りです。
- 端末にSSL-VPNアプリまたはブラウザ拡張機能をインストールします。
 - アプリ/拡張機能を起動し、ログイン情報でログインします。
 - 「接続」をクリックすると、選択したSSL-VPNサーバーに接続されます。
 - 設定に応じて、全通信または特定の通信がVPNトンネルで保護されます。
 
トンネルベースのSSL-VPNはプライバシーとセキュリティにより優れていますが、ポータルベースのSSL-VPNの方が一般的に利用されています。ポータルベースのSSL-VPNは社内ポータルサイトのみを保護できますが、トンネルベースよりも設定と利用方法がはるかに簡単だからす。また、ウェブブラウザを搭載したあらゆる通信端末(PC、スマートフォン、タブレットなど)に対応しています。
SSLクライアント、サーバー、サービスとは?

SSL-VPNは主に「クライアント」と「サーバー」の2つの要素で構成されています。「SSL-VPNクライアント」は、社内ネットワークに接続するためのアプリケーションで、端末にインストールして使います。これは、前述で説明したトンネルベースのSSL-VPNに当てはまります。
「サーバー」はシステムの頭脳のような役割で、接続時、通信データは安全なVPNサーバーを通過します。サーバーで通信データは暗号化され、端末と社内ネットワーク間で安全なルーティングが構築されます。サーバーはセキュリティポリシーに従って、ユーザーを認証し、不正アクセスを遮断します。
大半の企業はSSL-VPNを自社構築・運営はしておらず、SSL-VPNプロバイダーが提供する既製のSSL-VPNサービスを利用しています。SSL-VPNプロバイダーは、管理ツール・セキュリティ更新・カスタマーサポート付きで、すぐに利用を開始できる「クライアント+サーバー」のセットを販売しています。
SSL-VPNの設定方法
SSL-VPNを設定する場合、SSL-VPNプロバイダーのサービスを利用するか、自社でゼロから構築・運営管理する方法があります。
大体の企業は、専用サポート、セキュリティの定期更新、設定の簡易化といったメリットから、SSL-VPNプロバイダーを利用するケースが多いです。自社でSSL-VPNを構築すればフルカスタマイズやより強固なプライバシーの確保が可能になりますが、セキュリティ基準の維持やトラブルシューティングに必要な専門知識や予算が発生するため、構築や運営が複雑になります。
SSL-VPNの設定手順を段階的に説明します。
- VPNの導入方法を決める:プロバイダーを利用する場合は、各社の提供内容を比較検討してください。または、オープンソースまたは商用ソフトウェアを使用して独自のVPNを構築することもできます。
 - サーバーソフトウェアを選ぶ:プロバイダーを利用する場合は、ソフトウェアを提示してくれるでしょう。一方、自社でカスタム構築する場合は、OpenVPN Access ServerやSoftEther VPNが一般的です。また、サーバーをホストする場所(オンプレミスかクラウドか)、更新やセキュリティパッチの管理方法も計画する必要があります。
 - ユーザーアクセスと認証方法の決定:接続できるユーザーとアクセス権限を決定します。強力なユーザー名とパスワードを作成し、二要素認証(2FA)または専用キーを有効にします。また、チームが必要なファイルやアプリのみにアクセスできるよう、明確な権限を設定する必要があります。
 - サーバーのインストールと設定:プロバイダーの手順に従ってサーバーを稼働させます。自社でカスタム構築する場合は、VPNソフトをインストールしてSSL/TLS証明書を発行し、暗号化設定を構成します。
 - 設定のテスト:VPNポータルまたはクライアントを開き、SSL/TLS証明書が有効であることを確認します(ブラウザのURLバーに鍵アイコンが表示されているか確認)。ユーザー(社員)としてログインし、社内リソースにアクセスできることを確認します。ファイアウォールやルーティングの問題で接続が遮断されないか確認しましょう。
 - 社員への展開:ログイン手順、ポータルURL、またはクライアントインストーラーを共有します。強固なパスワードの設定と2FAの利用を促しましょう。セキュリティ機能を定期的に更新したり、必要に応じて権限を調整するなど、継続的に管理します。
 
SSL-VPNのメリットとデメリット

SSL-VPNのメリット
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- ブラウザ経由でアクセスできる(稀に例外あり):SSL-VPNはウェブブラウザ上で動作するため、ソフトウェアをインストールする必要がありません。
 - SSL/TLS暗号化:SSL/TLS暗号化は業界標準の暗号化で、データの盗聴や改ざんから万全に保護されます。ネット銀行や通販サイトでも使われている暗号化技術です。
 - 端末との互換性:ノートPC、タブレット、スマートフォンなど、一般的ウェブブラウザを搭載した端末に、アプリや複雑な設定なしですぐに接続できます。
 - ファイアウォールに対応:通信データは業界標準のHTTPS経由で送信されるため、ファイアウォールにブロックされることはほとんどありません。他のタイプのVPNプロトコルでありがちなトラブルを回避できます。
 - アクセス制御:管理者はユーザーの役割、部署、勤務時間に基づいてアクセス権限を決定し、許可されたユーザーのみがリソースを利用できるように制限できます。
 
 
SSL-VPNのデメリット
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- 保護範囲の制限:ポータルベースのSSL-VPNは、ポータルページ内しか保護されません。他のブラウザタブや非Webアプリケーション(ファイル共有ツールなど)は保護対象外となります。
 - 暗号化の制限:ポータルベースのSSL-VPNの暗号化は、端末上のすべての送受信データに適応されるわけはないので、データが漏洩する可能性があります。
 - 遅延の発生:音声通話、ビデオ会議、大容量ダウンロードなど帯域幅を大量に消費するタスクは、特に同時接続者が多い際は遅延が生じる可能性があります。
 
 
SSL-VPNとIPsec VPNの違いは?
SSL-VPNとIPsec VPNは、最も幅広く利用されている通信保護方式です。どちらも通信データを暗号化してオンライン上のプライバシーを確保しますが、いくつか違いがあります。
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- 保護範囲:IPsecはネットワーク層において端末間のすべての通信データを暗号化しますが、VPNクライアント(ソフトまたはアプリ)が必要です。一方で、SSL-VPN(TLSベース)はウェブブラウザなど特定アプリを保護し、ブラウザ経由でアクセス・利用ができます。設定次第で、いずれも強力なセキュリティを確保できます。
 - 端末との互換性:ポータルベースのSSL-VPNはウェブブラウザ経由で動作するため、ほとんどの端末やネットワークで簡単に利用できます。一方で、IPsec VPNは専用クライアントに依存しますので、各OSやファイアウォールごとにカスタム設定が必要な場合が多いです。
 - 速度とパフォーマンス:IPsec VPNは高速で、大量のデータや同時接続の管理に優れています。一方で、SSL-VPNは導入は簡単ですが、通信が集中するとパフォーマンスが低下することがあります。
 
 
SSL-VPNと従来のVPNの違いとは?
SSL-VPNは、社員が社内リソースへ安全にリモートアクセスするための技術です。従来のVPNは、プライバシー保護やネット上でのアクティビティを隠すためのツールです。
一般的に、SSL-VPNは以下のような用途で使われています。
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- 社員が社外(テレワークなど)から文書やメール、メッセージなどの社内リソースへ安全にアクセス。
 - 請負業者や第三者に社内システムへの一時的なアクセス権を付与する場合。
 
 
一方で、従来のVPNは以下のような用途で使われています。
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- OpenVPNやWireGuard®などのセキュリティプロトコルを用いた通信保護。
 - 高速かつ安全なストリーミングやダウンロード、ラグなくゲームを楽しみたい場合。セキュアなVPNなら、様々なネット利用に便利です。
 - 位置情報を変更したい場合。従来のVPNは仮想のIPアドレスを割り当てますので、広告主、サイバー犯罪者、悪質なネットユーザーから実際の位置情報を隠せます。
 
 
SSL-VPNの仕組みとまとめ
SSL-VPNは、社内リソースに安全にリモートアクセスするためのシンプルで管理しやすい技術で、テレワーク社員、提携会社、請負業者が社内ファイル、アプリ、システムに安全かつ容易にアクセスできます。SSL-VPNは使いやすく、コストや導入にかかる時間を節約できますが、利用状況によっては速度が遅くなったりすることもあります。また、端末上の全ての通信データを保護することはできません。
日常的なプライバシー保護、またはすべての通信データを暗号化して保護したい場合、CyberGhost VPNがお勧めです。Windows、Android、Mac、iOSなどの主要OSに対応していますし、アプリはシンプルで使いやすくワンクリックで接続が可能です。どのサーバーにも最高水準の暗号化、セキュアなプロトコル、自動キルスイッチが適用されますから、通信が即座に保護されます。45日間の返金保証付きなのでCyberGhost VPNにリスクフリーで加入しましょう。
よくある質問
VPNはインターネット上で安全なプライベート接続を確保しますが、SSL-VPNはSSL暗号化を使用するVPNの一種で、主にテレワーク社員が社内リソースに安全にアクセスするために使用されています。一方で、従来のVPNはオンラインプライバシーやネットをより自由・便利に利用する目的で使われています。
SSL-VPNは、SSLまたはTLSプロトコルを使ってトラフィックを再ルーティングし暗号化する仕組みです。ポータルベースのSSL-VPNは、社内システムにログイン後、ブラウザの単一タブのみを保護します。一方で、トンネルベースのSSL-VPNは、専用のアプリケーションが必要で、ウェブブラウザからのトラフィックだけでなく全ての通信を暗号化します。
ポータルベースのSSL-VPNは、ブラウザの単一タブまたは(社内システムアクセス用の)ウィンドウにしか保護が適用されません。また、SSL-VPNは処理速度がやや遅く、同時接続数への対応能力が低い傾向があるため、ビデオ通話・音声通話や大容量ファイルのアップロード・ダウンロードといったリアルタイムのタスクには不向きです。
SSL-VPNを有効化するには、まず端末上で設定を行う必要があります。設定手順はご利用のSSL-VPNサービスによって異なりますが、一般的には、証明書の設定、認証方法の追加、ファイアウォールポリシーの作成などといった作業が発生します。
SSL-VPNは主に2つの方法で設定できます。サードパーティのSSL-VPNサービスを利用するか、自社でVPNネットワークを構築する方法があります。大半の企業は前者のケースで、SSL接続サービスを提供する専門のVPNプロバイダーを利用しています。VPNプロバイダーが設定、セキュリティ、継続的なメンテナンスを管理・運営してくれます。
社内のIT部署で対応したい場合、自社独自のSSL-VPNを構築できます。サーバーへのVPNソフトウェアのインストールや、すべての管理を自社で行うことになるので、いろいろカスタマイズはできるものの、時間と技術的知識が必要です。
いいえ。通常、SSL-VPNはサイト間接続型には使用されず、リモートアクセス型接続に利用されます。SSL-VPNは主に、テレワーク社員が社内ネットワークに安全に接続するために使われるものです。一方で、サイト間VPNは2つの社内ネットワークを接続するために使われるものです。
現在、SSL-VPNの暗号化方式はSSLではなく「TLS(Transport Layer Security)」プロトコルが採用されています。最新バージョンは「TLS 1.3」で、旧バージョンに比べてさらに安全かつ高速です。SSLはセキュリティ上の欠陥から使用されなくなりましたが、依然としてTLSよりSSLという名前の方が認知度は高いです。
はい。ポータルベースのSSL-VPNはiOSやAndroidを始めとするモバイル端末に対応しています。SSL-VPNははウェブブラウザ経由で利用可能なので、ブラウザを搭載する端末であればポータルベースのSSL-VPNが利用できます。一方で、トンネルベースのSSL-VPNはアプリのインストールが必要なので、アプリがモバイル端末のOSと互換性があれば使用可能です。
大半の場合、SSL-VPNの認証には認証情報(ユーザー名とパスワード)が採用されています。また、二要素認証(2FA)を追加して各ユーザーの身元を確認できます。
はい。SSL-VPNはリモートワークのアクセスに最適です。ポータルベースのSSL-VPNはブラウザベースなので使いやすく、企業側も簡単に社内リソースのアクセスを管理できるので便利です。
                
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